「死ねって命令しなければならないって言いましたよね」 いきなりライフルで頭を撃たれた気分だ。皇帝陛下をそんな気分にさせるたぁ、この世で二人か三人か、それか お前だろうよ。可愛いルークとお前じゃ大違いだな。お前も俺から見たら小さくて可愛いルークには違い無いが。 諦めたようなそんな顔でもないけど、死にたいなんてお前、思っていないだろう? 「そりゃ思ってないです。死にたくないし、…生きていたかった」 だけど死ぬしかないんです、そんな顔してやがる。直談判に来たのは「俺は死にたくないんです!」って 言いに来たのかと思っていたのに。そりゃ正直キッツイ。さっきガイラルディアにもしこたま言われたんだ、 今お前になんか言われたら流石の俺だってヘコむって。 「別に…陛下に何か言いに来たんじゃないです」 それはそれで興醒めだな。俺はなぁ、お前に死ねっても言わなきゃならないが、それに伴うお前の 仲間の罵声罵倒をも請け負わなきゃならないわけだ。―嫌味な程言ってこねえな。テオドーロ殿にでも遠慮してんのかね。 まあさっき言われたっちゃー言われたんだが、それだけだったからな。お前が好きなあの子とか、なんか言ってなかったのか? 「えっ、な、べっべつに好きなとか!なんなんですかそれ…」 べっつに、あれのことだから「私は止めないわ」とか言いそうだと思ってなぁ、一番止めたいだろうに。 何を演じてんだか知らないが、状況が違うことを理解してんのかね。 「…いえ…多分ティアは、 …いや、なんでもないです」 おんやぁ、俺はティアだなんて一言も言ってないんだがな。おっと怒るな。わかってるって、ああわかってるさ。 それで何なんだよ、お前この前みたいにまたちょっと話してみたかっただけか? 「ったく… ああ…いや違うんです。お願いがあって」 …なんだよそりゃあ。嫌だななんかそういうのって。お前はもう死ぬ気でいる。俺はお前に死んでくれと 言うしかない。そんな俺に頼みか。豪儀だねぇ。俺はイイ奴だから「わかった」って言うさ、言ってみろ。 「イヤだって言いそうだと思うんですけど、いいですか」 あーもうなんでも言え。皇帝権限で叶えてやるよ。(死にたくないなんて言う筈がない、わかってる。 だから皇帝権限で「何でも」叶えてやるって言うんだよ) なあルーク。そういう諦めたようなツラをするなよ、ここで死ぬなんて、お前が思うから、な? ああ、あんまりこういう事は言いたくないんだが… 「じゃあもっと嫌なこと」 何なんだ? 「はっきり俺に命令して欲しい」 一応聞くが、何をだ。 「死んでくれ、って」 今度はミサイルかよお前。 「だって陛下、『死ねって命令しろってのか』、とか言って。はっきり言ってないですよ」 まあな、……お前、やっぱりすごいのな。俺が逃げてたって、わかってるんだな。はっきり言ってないから 誰も責めようがないし、お前だって俺に「頼み」で死にたくないなんて言わないんだ。―俺がきっちりと言えば、 皆が俺を憎み、俺を責める。ああそうだな、それでいいんだよ。だけど俺は、自分の保身の為にも言うぞ。 お前の為に、そんなことを言いたくない。 「ああえっと、そうじゃないんです。俺は死にたくないとか、あなたに言う気はないし、皆も陛下を責める訳がない。 俺が死ぬ方が良いんだから」 全く意味がわからんな。どこまで深読みさせる気だ? 「あなたが俺に死ねって言ってくれれば」 はっきり言うのはぶっちゃけ嫌だって言ってるだろうが。 「……俺はあなたの為に死にますから」 「障気を消す為でも、世界を救う為でも、アッシュを生き残らせる為でもなく、あなたの為に死にます」 なあ、どうだ。あのあとお前が死んでたら、俺は一生言わなかった俺を恨んだだろうよ。―なに笑ってやがる、 んん?変わってないだと?バカヤロウ、変わってないのはお前さ。お前が変わらないから、俺だって変わらないんだよ。 あの時どういう心境だったんだ?まさか言わせて俺に罪悪感を追わせ、ナイーブな俺を自殺に追い込むつもりだったとか …まあ、お前そこまで頭良くなかったからなあ。 やっぱり俺のことが好きだと?あっそう。 大体なぁ、俺のことキライっつー方がおかしいんだよ。こんなに良い男だぜ? |