ルークがガイと共にやるはずだったミュージカルを急に辞めてから一週間経つ。その間に ガイとティアが二人して私に「ルークがモダンを踊るって!」と言ってくる。私に一体どうしろと言うんだ。 大体ルークのジャズは下手だったし、モダンの方が良いに決まっているでしょう。 二人(とルークの兄)はまだえらく心配しているが、自分はその行く末を知っているのだから このように冷静なままなのかもしれない(結構前に親友―と呼べるような関係の人物、から 「やっとルークを見つけたぞ!」と嬉々とした電話が来た。はっきり言ってウザい)。
 大体私と親友(だと思う)の彼が、どうして私からルークを5年も探り当てられなかったのか、 それは至極簡単な理由だ。隠していたから。彼がルークを初めて見た時から「あいつを俺のものにしたい」と 私に言っていた。―まあ、ルークはその次の日には雲隠れした訳だが。
 だけど私は知っていた、ルークがどうしてモダンを辞めたかを。ルークがそれからどうしていたかを。 だけど彼には言わなかった。手元に置いておきたかったからだ。
 何故って、当たり前の疑問だ。何故。あんなガキを手元にどうして置いておきたい。 大体本当はどうでもいい、どこで誰が野垂れ死のうが。

 だけどルークはだめなんですよ、彼がいないと、…ほら。私の大切な彼が見たまんまに元気がないじゃないですか。 彼が私を愛してくれているのは知ってますが、ルークは彼の別格一位なんですよ。だからルークは私にとっても 別格二位といった所です。ルークは彼にどこへ行ったかを言ってませんから、心配に心配を重ねまくってますよ。 あーあ、本当人の事を考えられない坊やですね。まあそれはもう一人のブロンドもですがね。
 大体今だって彼がわけのわからない恋愛映画をボケーっと見てるのも、ルークのことばっかり考えてしまうから ですよ。ブロンドの美女が貴公子におやすみのキスとおはようのキスをされる様を観て、うぇ、と砂を 吐く仕草をするのも、ルークのことばっかり考えてしまうからですよ。

 ああ、さっさと眠って私の夢を観ればいいのに。

ハニー・クラウン Chapter.02 「ブロンドとブルネット」

「ジェイド」
「はい?」
「またラブソング作ってくれよ」
「………」
「俺のために」
「…はいはい」

 どうせまともな曲なんて書かないってわかってるのに、了承しただけで貴方の顔はまるで花が咲くようですね、 こっちも砂が出そうです。


title/BALDWIN
わけのわからない恋愛映画=ニューヨークの恋人