ルークは攻 ピオニー陛下は受も大好き という妄想から生まれたルーク×ピオニーです
しかも意味がわからないですけどパラレルです
売れないジャズダンサーのルーク(20歳)とモダンバレエの天才ピオニー(39歳)。
ちまたで大萌えの踊り子ピオニーを書いてみたかった…というのもある…

許せる神はスクロール↓
(…まあ例の如くエロとかは無いけどね…下手したら萌えもない
しかも下手したら普通にピオルクぽい←致命的 いや、これはルクピオです 誰がなんといおうと)





















 ルークの指がビデオデッキのリモコンの、再生と巻戻しを交互に連打していた。画面に映る 世界の天才は、腕の撓り方が他と違う。浅黒い肌に薄くてきれいな金髪はとても似合って、 しかも顔も(…かっこいい、なー)かっこいいそうだ。ビデオは見過ぎで画像が荒くなり過ぎている。 目を凝らすのと同時に画面に近寄ってよく見てみると、その目の動きまでもが、バレエダンサーとしての 風格と、溢れる魅力。次に金が入ったら、DVDを買おう。
 外を見ると朝日に空が白んでいた。何時かと思えば五時だ。小腹が減ったからコンビニにでも 行こうか、とほとんど鳴らない携帯電話を取り、あまり入っていない財布を握った。 しかしほとんど鳴らない筈の携帯が唸りだした。「…誰だよ、朝っぱらから」起きていたからいいものの、 こんな早朝からかけてくるのはジェイドか、別れた彼女かもしれないけど、番号は知らないものだった。
「もしもし」
『朝早くから申し訳ない、ルーク君、か?』
「はぁ、そうですけど」
 低い男性の声がしたが、やはり聞いたこともないし、相手もかけてくるのは初めてらしい。 迷惑をかけてすまないな、だが念のためというだろう、と彼が言う。ルークは黙って聞いていた。
『今日のうちのオーディションに来てくれないか』
「お断りします」
 すっぱりと断ったのはどうせこのオーディション、ミュージカルだ。今はミュージカルを二本持ってる、 他に時間を割くなど出来るまい。昨日もオーディションがあったし誘われていたが、すっぽかした。
『昨日すっぽかしたのは、今日うちに来てくれるからだと思ってたんだが』
「…なんですかそれ… 大体俺のケー番知ってるなら、一回俺を落とした事あるトコだろ」
『ご名答。だが、俺は君を俺のミュージカルで踊らせたかった。
 同じ所属の奴らでも、君を渡すのは嫌だったのさ』
 そろそろ空腹が限界だ。話を聞くのもたるいし、さっさと切ってコンビニに行こう。 その後練習があるし、今無駄な時間を費やすのは勿体ない。
『来てくれよ。待っている』
「…あんた誰?」
『ああ、名乗ってなかったか。ピオニー・ウパラ・マルクトだ。受付で名前を出してくれ。すぐ行くから』
 名前を聞いてやっと少し興味が涌いた―少しどころか恐ろしいほど。さっきまで見ていたビデオのケースを 見て絶句。「…ピオニー、だって?」世界が誇る天才の声が機械ごしに耳に入って来ていた。
「行きませんよ、俺は。行くとこあるんで、切ります。それじゃ」
 あっとかなんとか声が聞こえた気がしたが、知らないフリでボタンを押して、携帯を閉じた。 よく見たらメールも来ていた。双子の兄からだった。未だに心配するメールが来るが、食べていくだけは 稼いでいる。コンビニ行っても買えるのは一番安いシーチキンのおにぎりかな。あと煙草も買おう。 これも安いのでいい。金はやっぱりあんまりない。 ルークの思考はすぐにそんな風な波に飲まれたが、 携帯を持ったてのひらは無意味な熱を放出しきれないでいる。
 外に出てコンビニまで歩く距離の間、さり気ないままで携帯をまた開き、電話をかけた。 あまり自分からかける事はない。金がかかるからだ。朝っぱらの五時だが、相手は電話に出るという 確信がある。「あ、ガイ?」ほら、出た。相手はやはり眠そうな声。
『おまえ…こんな朝っぱらから何だよ…金貸してほしいのか』
「んなわけあるか。それより俺、今日の練習行かないから」
『あ?そうか?体調でも悪いか』
 ガイの心遣いに感謝はしたが、悪いどころか寧ろ、この往来でも踊っても良い気分にも似ている。
「…いや、もう、これから先も行かないっていうか」
 利き手である左手の方に、さっきからの熱が全部集まっていく気がする。たまらず携帯を持ち替えて逆にすると、 耳元に怒号が響いた。



ミルク・クラウン Chapter.01 「掴まれた掌の熱」
最初からそこには何もない


title/渦旋