少し話がしてみたくて、一人でピオニーの私室の扉を叩いて入ってみれば 「お前俺の事きらいとか言ってなかったか?」とルークの頭を撫でた。どうして知ってるのかなあと 少しだけ気になったけど、どうせジェイドかガイがもらしたんだろう。「苦手」が婉曲して「きらい」 になってしまっているが、似たニュアンスではあるし。

「そんな、嫌いとかじゃないですよ」
「そうかー。何しにきたんだ?ルークを見に来たか」

 ああまたあんなとこでひとり黄昏れてらー、とピオニーが見た先に、ブウサギのルークがぽつんと一匹。 まるで自分のようで。自分がレプリカで、みんなと違って、そんな俺と同じ名前だから、あのルークもひとりなのかな。 縁起の悪い名だな、聖なる焔の光。

「あいつ、プライドがバカ高くてな。他のやつらを寄せ付けないんだよ」
「えっ?」
「おまえみたいだな。小さい生き物だが、どこまでも誇り高い」
「…俺は…そんなんじゃないです。あのルークが、ちょっと羨ましいかな」

 一人であろうと毅然としている、小さなブウサギのルーク。自分もそう在れればいいけれど、 一人になるのは怖い。一人で生きていくには怖すぎる。―そうなれるこのルークは、とても気丈で 強くて美しい。
 羨ましい、ともう一度言おうとしたら、一匹のブウサギが、ブウサギのルークの方に向かって歩いて行く。 ゆっくりと近付く様は、恐らくルークの警戒心を騒ぎ立てない為だ。 「陛下、あのブウサギは?」「…あいつはジェイドだ。勇者だなー…」二人でその二匹を眺めていると、 ルークに向かってブウサギルークがぎらりと視線を送る―これは睨まれているのだろうなぁ、このルークって 俺よりアッシュに似てるんだけど。ブウサギのジェイドはルークとの間に一定の距離を保って数秒止まっていたが、 そろそろと歩き出し、ついにはルークに寄り添う事に成功していた。

「おおー、すげーなジェイド」
「下心だらけだ」
「?なに?なんですか」
「発情期なんだ、今」

 あー… とルーク(こちらは人間の方だ)が間抜けな声を出す。そういえばジェイドとルーク( 人間のルークの名誉の為明記する、こちらはブウサギ)の 間には子供がいる。最初の子にはガイラルディアと名前がついている、その次の子はナタリア。 多分次生まれたらアッシュかティアかアニスだろう。
 ところで結局何をしにきた、とピオニーが最初の会話を思い出した。いえ、話をしたかっただけです、とルークが 答える。「ならば、目的は達成か?満足いったか」ピオニーが柔らかく微笑みながら言う。 その表情はとても綺麗。

「そうですね…ちょっとだけ」
「感想を言ってみろ」

 ここに来て、ブウサギについて少し語って、それの感想? うーん、とルークが唸ると、今度のピオニーの顔は興味津々と言った顔。それを見てまた違う 感情が湧いて、もう一度「ぬー」とわざと言ってから、口を開いた。

「貴方の事はやっぱり、嫌いじゃなくて、好きです」





か ぐ や の 君