『 樹の先では 』



 焔に懐かしい暖かみを感じながらも、 何も無い、 その無音へも尾が引かれた。 道は違えど必ず繋がる筈の二人を。 ―火とは、音も無く燃えるものだったか。




「アッシュ、お願いします。ナタリアとルークを助けに行ってあげて下さい」


 それを渋っているアッシュだが、ナタリアと「ルーク」だからだ。もし頼んでいるこの人―イオンが、 口だけでも「ナタリアを」と言うのなら、 (結果的にルークを助ける事となっても否助けられるのだから)躊躇せずに行っただろう。
つまり下らない意地だけが彼をつなぎ止めているのだ。

「何故俺が行かねばならん。導師の権限でも使ったらどうだ」
「間に合いません。それに、絶対に、貴方でなくてはいけません」

 少年のそれとは思えない表情で、強くアッシュに言い放つ。それは流石にダアトの最高指導者といった 姿を見せてくる。


 俺でなくては、 ならない、 だと?
 ナタリアを助けるのが?
 あの劣化レプリカを助ける、のが?


「………反吐が出る」
「アッシュ、」
「行けばいいんだろう!」

 乱暴にドアを開けて閉め、導師の私室を後にした。イオンはその音に少し呆れつつも、アッシュの背中を 見送る。

「……ありがとう、アッシュ」


そう、貴方でなくてはならないんです。
あの人と同じ眼をした貴方でなければ。
貴方の半身であるあの人を助けるのは、貴方でなくては。

「…アッシュ、僕は― 貴方も、とても…―」






言葉の途中から外で風がざわめき、木々が音を立てて揺れていた。 柔らかい葉が踊る様子は、まるで緑の炎のような形だった。もしかしたら、あれが、とイオンは思ったが、 すぐに思考をやめた。


音も無く緑の火が燃える。 それはあまりにも、静かな。




つまり、イオンとルークは恋人同士だったので(それこそ酷い捏造)、アッシュとも 恋人だったんですよ(なにそれ…
えーと偽姫騒動の時に捕まってアッシュが助けに来てくれたアレです アレ?イオンがアッシュに頼んだんだよね?(ウロ
あ〜志賀直哉せんせい好きすぎる


――― 樹の先では*01/25